14ヶ国より寄せられた約200点の絵には、少年たちの苦しみ、悲しみ、将来への希望、平和への願いなどが個性豊かに描かれ、見る者の胸を打つ。
不幸にして罪を犯した少年たちは心の裡に重い問題を抱え、深い傷を負っている。そうした少年少女たちの深淵を理解し、社会復帰支援の一助となる一冊です。
大人はみな子供時代の体験者だから、自分の体験からほかの子供の心を推し量ろうとする。だが、純白の地に体験という絵具を塗りたくるようにしてできた子供の心はそれぞれに違う。殊に矯正施設に居る子供の心には、強烈な苦悩と渇望が刻まれているはずである。本書は、アジア14か国の悩める子供の心を窺い知る小さな窓の役割を果たすことだろう。
コンクールの審査員委員長をつとめることになった私は、このとき初めて矯正施設に入っている少年少女たちの絵画を目にしました。施設に入っている彼らの作品は、一般の少年のそれと較べてもまったく遜色はありません。むしろ並々ならぬ才能を片鱗をかんじさせるものが少なくないのです。また、たとえ技法的な稚拙さはあっても、どの作品にも注目すべき長所があり、いずれも丁寧にとりくまれていて、胸を打つものばかりです。それぞれのお国柄の特色が現れていることも、面白く感じました。一般に、多くの経験を踏むことは人間に幅と深みをもたらします。作品に触れながら、彼らの若さゆえのエネルギーをなんとかよい方向に伸ばしてやりいたいという思いに駆られました。少年たちは絵とエッセイによって、真剣な態度で心のうちを訴えかけてきました。彼らの作品のなかには、迷い、傷つき、人を傷つける苦い日々を送ったゆえに得られた理想、夢、希望が託されています。今度はわれわれがその表現のなかから彼らの思いを汲み取る努力をする番です。芸術の本当の意義は作品を介して、行われる相互のコミュニケーションにあります。
1983年に法務省の委託を受け、篤志面接委員として、女子少年院で音楽指導のほか、毎週火曜日には少女と向き合って心のうちを聴いています。耳慣れない名称ですが、篤志面接委員の主な役割は、矯正施設(刑務所や少年院など)の被収容者が持つ様々な問題、たとえばー精神的な苦しみや悩みの解決、将来の生活方針のための適切な助言指導をし、また趣味や教養、技能を磨くための手助けをするものです。毎年秋には、関東16の施設の少年少女が集まって合唱コンクールが行われます。私が初めてコーラスを指導した時、少女たちの歌は、音程もハーモニーもバラバラでした。個性が強い彼女たち。何回注意されても、照れてソッポをむく子、指揮棒を無視して歌う子、視線が合うとニコッと嬉しそうに笑う子。でも日を追うごとに上達し、練習時間を楽しみにするようにっていったのは、自分の声がハーモニーにとけるようになる喜びとともに、心をひとつにすることを知ったからのようでした。